『血圧の薬って、始めるとやめられないんでしょ?』



結論から言うと、「やめないほうが無難」なことは多いですが、「やめられない」ことはないです。「やめると、血圧の値が上がることが多い」だけです。



ちなみに、「やめないほうが無難」なのは、

  • 動脈瘤がある
  • これまでに脳卒中や心筋梗塞・心不全を起こしている
  • すでに心臓や腎臓に機能低下が確認されている

など、血圧が高いままでは重大な結末に繋がる可能性が高い方です。



薬をやめると必ず血圧の値が薬を飲み始める前に戻るのかというと、案外そのままの場合もあります。


薬をやめても血圧がそのままのことが多いのは、

  • 心身へのストレスで血圧が上がっていた方
    介護、仕事、人間関係や経済状況のトラブルなどの負担やストレスによって血圧が上がった場合、その負担やストレスが落ち着いた後なら、薬をやめてみても血圧は上がらないことが多い印象です。

  • ご高齢で血圧が落ち着いている方
    お年を召すとともに血圧が落ち着いてきた場合、薬をやめても血圧が上がらないことが多い印象です。人格が円熟するからでしょうか?食事量が減るからでしょうか?

  • 減量に成功した方

  • 禁煙に成功した方



血圧を下げる目的は、あくまでも「病気を発症する確率を下げる」ことです。具体的には、脳卒中や心不全、腎不全など、血管が傷ついて起きる病気になりにくくするためです。


病気を発症するかどうかは、確率しかわかりません。血圧が高くなくても病気になる人はいますし、血圧が高くても病気にならない人はいます。


 どのくらいの確率で病気を発症するのか?

  循環器疾患リスクチェック

  https://epi.ncc.go.jp/riskcheck/circulatory/index.html

 

ガイドラインで定められた値も重要ですが、どのくらいの確率なら許容できるかも大事です。


「薬さえ飲んでたら死ぬ確率がわずかでも減るんやったら、なんぼでも飲む」という方も、「大して変わらへんのやったら、薬なんか飲みたくない」という方もおられます。


その判断はご自身にしかできませんし、私はご判断を尊重します。



私は、患者さんから「薬を減らしたい・やめたい」という要望があれば、ある程度状態が落ち着いているという前提のもとで、やめない方が無難な薬以外はやめてみることにしています。


やめたり減らしたりしても不利益が出ない可能性が高い薬なら、薬を中止したり減らしたりする提案もしています。


すべての薬が中止になってから数ヶ月たっても安定しているようなら、診療は一旦終了です。



薬が全て中止になって診療が一旦終了になることは、多くはないですが、確実にありますし、増やしていきたい。


ストレスへの対処や禁煙、減量のきっかけになりそうなことを、折を見てお伝えし続けることで、1人でも多くの方の診療を一旦終了にできたら、と思っています。