睡眠薬を使う代わりにできること
前回の続きです。
睡眠薬や安定剤は使わない方がよいのは、こけて脚の骨を折って寝たきりになったり、元気がなくなってしまったりするから、という話でした。
では、眠りで困っているときにどうすればよいのか?睡眠薬を使う代わりにできることについて、データに基づく分析と対応はこちら。
健康づくりのための睡眠ガイド2023
https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
これを踏まえて、私自身と患者さんの経験を加味して、お勧めできることを伝えます。下書きの段階ではアレコレ書いていたのですが、長くなりすぎたので、影響が大きいと思えることだけ。
身体を動かす 多めに歩く
疲れて眠くなるのはもちろん、身体を動かしている間は余計なことを考えにくいという面もあります。
まずは「多めに歩く」がオススメです。誰もが経験豊富で怪我につながりにくく、いつでもできて、特別な道具も必要ありません。陽にあたる効果も得られます。遠足、ハイキングや山登りなど、たくさん歩いた後によく眠れた経験があるのではないでしょうか。
個人的な体験では、歩き遍路で毎日40Kmほど歩いた時はめちゃくちゃ眠れました。
昔の人は「伊勢へ七度、熊野へ三度、愛宕さんへは月参り」と言ったそうですが、愛宕さんへの月参りは、体力だけでなく気力も養われ、よいのではないかと思います。
愛宕神社まで登らなくても、「行けるところまで行ったら引き返して、清滝で川に足をつけてゆっくりしてから帰る」でも十分な効果があると思います。冷たい川の流れに足をつけていると、不要なものが洗い流されていくように感じられるのでオススメです。
愛宕山まで行くのは大変なら、近くのお寺や神社、川沿いもよいですし、いまのような暑すぎる時期や逆に寒すぎる時期は、ショッピングモールや百貨店、地下街などで歩き回るのもよいですよ。車や自転車が来ないところを歩くのがオススメです。
「たくさん歩く」以外では、あまり動けなくなった方でも可能な「深呼吸」も候補です。腹式呼吸で吸うより長く吐くことを繰り返す。意識さえあれば、最期までできる運動ですし、落ち着く効果もあります。
ストレス・負荷を減らす
いわゆるストレスや緊張、自律神経の高ぶりといった言葉で表されるものが眠りに影響している人が多い印象です。
やることを減らす
お勤め・家事・自営の仕事・介護も、プライベートも、やることを1つでも減らして、何もしなくてよい時間を少しでも増やしましょう。
週5や週6で9時〜17時の予定が詰まっていることをなんとも思わない人もいますが、これは「人を雇うときに仕事させてもよい上限」です。むしろ、たいていの人には多すぎる負荷だと考える方がよいでしょう。ましてそれを期間限定ではなく何ヶ月も何年も続けるのは、無茶です。
「何もしなくてもよい時間を増やすなんて、そんなことができたら苦労しない」と思うかもしれませんが、せっかくの人生を楽しむためにも、いま一度、「する必要があると思っていたことを、せずに済ませる方法」を考えて、試してみてください。
影響が少なそうなことや、合わない人と関わることから一回やめてみて、不利益があれば再開するとよいです。再開する場合も、誰かに任せることができないか検討しましょう。
ものごとへの反応を変える 幻影ではなく「いまここに実際にあるもの」を感じる
食うに困らず、安全に雨風しのげる場所で、ひとり静かに過ごしていても、「合わない人」「不安なこと」「怒り」などが気になってしんどいとしたら、「いまここには、合わない人はいないし、不安に思っていることも起きていない、怒りの対象もない」ことを感じましょう。自分の中にしかない幻影ではなく、いまここに実際にあるものだけを感じましょう。
これは原始仏教の考え方で、欲望・怒り・妄想といった自分の心の中にしかないものに無駄に反応してしまわないことで、穏やかな心で過ごすことができます。ときどき思い出してやってみるだけでも結構な効果があります。
反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」
ストレスを開放する 力をぬく 書く
ガチガチに身体に力が入ったままの方は、力を抜くことも大事です。お風呂にゆっくり入ったり、ホットパックやお灸などで身体を温めたり、いったん力を入れてから力を抜いたり、背伸び、ストレッチボールに乗るといった簡単なストレッチをしたりするのがよいです。
ホットパックやストレッチポールって何?という方のために
ホットパック
富士商 ホット&クールパッド グリーン Lサイズ (ゴム不使用でニオイ軽減 タイプ), 20×30×2cm
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ストレッチポール
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また、湧き出てくる思いを書き出すことでも、力を抜くことができるように思います。紙とペンでもよいですし、タイピングしてもよいですし、メモアプリに音声入力でもよいです。最近なら録音してからAIにメモにさせるのもよいです。
あとひとつだけ追加するとしたら、
睡眠時無呼吸の可能性を考えてみる
「寝た感じがしない」という方の中に、睡眠時無呼吸の方がおられるようです。
ご家族から「いびきがひどい」「寝てるときに息が止まってる時がある」などと言われるようなら、検査してみるのもひとつです。ご相談ください。
CPAPという機械を鼻につけて寝るとよいというのですが、まずは首枕(頭の下ではなく、首の下に入れる枕)か、枕なし、横向きに寝るを試してみるとよいです。太っている方は減量で改善することもあると言われています。
長くなりましたが、ハードルが低そうなことから試してみてください。
よく眠れますように。