多くの人にとっての合理的な選択肢として、全世界株式インデックスファンドの普及に尽力された山崎元さんの最後の著書です。2022年の夏に食道癌が見つかり、2024年1月に亡くなりました。


理路整然としてわかりやすいだけでなく、茶目っ気あふれるユーモアが散りばめられており、どんどん読めてしまいます。


もちろん、東大卒で三菱商事からキャリアをスタートされた山崎さんは多くの人よりお金持ちであり、合理的な思考ができて行動力もある人だからこそできた内容もあるでしょうが、誰でもそのまま真似ることができる行動も多数あり、参考になる部分は少なくないです。


  がんになってわかったお金と人生の本質

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印象に残ったところをいくつか。


損得勘定だけでも「検査受けるべし」

ウイスキーがお好き = 食道癌リスクの高い飲酒習慣があり、健診費用の負担などなんの問題もない裕福な方なのに、いくつかの理由から胃カメラを受けておられなかったようです。


ご自身でも「現実に即して経済計算をしてみると、損得勘定だけでも『検査受けるべし』が正解に近かった」と書いておられますが、お酒をたくさん飲む方や、強めのお酒を嗜む方は、やはり胃カメラを含めた健診を受けておくのがよいと思います。



癌患者と投資初心者は似ている

溢れる情報の中から何が適切な情報なのかを判断するのが難しいこと、不確実性下の意思決定であること、病気になったこと自体はサンクコストとして今後変えられることに意識を集中するのが大事なこと、といった点が似ているとのことです。


確かにその通りで、急性疾患と比べて、考える時間があることや自分で方針を決める必要があることが癌の特徴だと思います。



がん保険はやっぱり要らなかった

がん保険に支払う金額を自分で運用する方がよいという結論です。高額療養費制度が改悪される予定で、いつまでも同じではないかもしれませんが。



再発が発覚したあと、化学療法1クール目の入院中に、自ら申し出て退院した

再発後の化学療法では目に見えて調子が悪くなったため、治療中断をご自身で決断して退院されました。


簡単にできる判断ではないと思いますが、予測できる利益と治療による不利益を比べて、治療による不利益が大きければ、治療中断は合理的な選択ですし、たとえ合理的な判断でなくても、自分には必要ないと感じたら、断っていいんです。


自分のことは自分で決めていいんです。医療や福祉で提案されたものをそのまま受け入れる必要は全くありません。



人の幸福感の99%以上は「(自分が)承認されている」という感覚でできている

本当にそうだと思います。



最期の日のぎりぎりまで幸福は追求できる

「上機嫌なら全て良し、と思うがいかがだろうか」と、この段落を締めておられます。


上機嫌についてのもう一箇所の言及部分では「病気の療養でも、投資でも、仕事でも、遊びでも、快活に機嫌良くやる方が、自分にとっても、他人にとってもいい」とも。


最期の辛さにもよるとは思いますが、上機嫌で過ごそうとする意思や習慣があるかないかは、上機嫌で過ごせるための大きな要素だと感じています。



実際に行われた手続きの具体例

同時期に亡くなられたお母様のための対応も含め、財産管理等委任契約、任意後見契約、墓なし坊主なしの弔いなどをされました。相続や世代交代にあたって、検討する価値があると思います。






私も、ユーモアといっしょに上機嫌で過ごしたいと思いました。


多くの気付きが得られる良書だと思います。是非ご一読を。